リップクリーム
ずいぶん前、私がまだ今の部署に慣れていなかった頃の話である。
私の部署では、社内の各部署の経費精算業務もあずかっている。
その日、経費の精算にやってきた社員。
私「受領印をお願いします。」
社員「あっ、あれ印鑑忘れたかな…」
私「サインでも構いませんよ。」
社員「いや、たしか、あったはず」
と、ポケットを探り
社員「あった!」
と、勢いよくポケットから出したのはリップクリームだった。
冬になると思い出す。
わざとだったのか、天然だったのか。それは定かではないが、不慣れな部署での緊張の解れた瞬間であった。
こうした日常のほんの些細なひとこまに、人は救われたりするものだと思う。
今でもその人を社内で見かけると、「ありがとう」と心のなかで、そう つぶやいている。
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