卓上カレンダー
会社のデスクの引き出しに12枚のカード式のカレンダーが入っている。
12月になり、最後の一枚になった。
私の大好きなひとから貰ったカレンダーである。恋愛感情があるのかないのかは分からない。ただ人間として大好きなひとだ。
大変なことも、雑用も、弱音を言わず一生懸命こなしている。
私は、波打ち際で泳ぎ方を教わっていた。それでも、さっぱり上手くなれなくて、泳ぎ方を教えてくれていた人も呆れて「あとは自分で覚えてね」と去っていった。
私は諦めなかった。
1人で何とか少しずつ泳げるようになってきた。けれども、ここは波も荒く、ちょっと気を緩めるとたちまち溺れそうになる。
ある日、溺れかけている私を、見るにみかねたのか、彼は私の手を引いて沖へ誘導してくれた。
沖へたどり着くまで、何度も嵐がやってきた。荒い波にも幾度となくのまれそうになった。彼は厳しかった。決して私の手を離すことはなかったが、下手な泳ぎを怒鳴り付け罵ったりもした。
長いこと荒波に揉まれながら泳いでいた私は、やがて、泳ぎに必要な筋肉もつき、波も恐くなくなった。
そして、懸命に沖へとたどり着いた時、もう彼は私の手を離していた。
ありがとうも言えていない。
これは、仕事の話である。
ありがとうを言えないかわりに、私も、以前の自分のような人を見かけたら、沖へ手を引きながら泳ぎ方を教えようと思う。
そのためにも、もう少し逞しくならなくてはならないだろう。
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