職場のフロアから廊下に出てエレベーターを待つ。ドアが開くと、既に１人黒のショート丈のコートを着た女性がいた。

私は軽く会釈をして乗り込んだ。

沈黙のあと、鼻をすする音がした。

そして「なんかゴメンナサイね」と彼女は言った。

いえ、そんな、謝ること無いですよ、と言うつもりでその女性の顔を見ると、どうやら雲行きが怪しい。マスクで隠されていない目は赤かった。

そうか…

「そんな時もありますよ」